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People 社員インタビュー

テクニカルアーティスト

Technical Artist

STAFF INTERVIEW

ゲーム制作会社勤務を経て、2007年にポリフォニー・デジタルに入社。『グランツーリスモ5プロローグ』よりコースチームでCGアーティストとしてコース制作を担当し、現在はテクニカルアーティストとしてグラフィックスシステムの検証、ワークフローの改善・合理化、アーティストへの技術導入とサポートに取り組む。

  • 絵とゲームに明け暮れた少年時代

    ゲーム業界のアーティストはほとんど美術系の大学や専門学校を出て業界に入ってくるのですが、私はそうではない珍しいケースだと思います。小さい頃から絵を描くことは好きでした。研究者だった父の影響で理屈っぽいメガネ君でもありましたが、いつも空想で頭がいっぱいで、それをアウトプットしたくて仕方がない子どもでした。学校では図工の時間がいつも楽しみでした。そのまま中学・高校と美術部の部長を務め、いわゆる絵画作品的なものからマンガ・イラスト、立体物など長年にわたっていろんなことをやりました。しかし、それを仕事にしたいとか、美大に行こうと考えることは夢にもありませんでした。ピアニストとかヴァイオリニストのように、幼い頃からきびしい英才教育を受けた特別なひとたちだけが進む別世界だと思いこんでいたからです。

    ビデオゲームとの出会いは4~5歳くらいでしょうか。原体験はアメリカで見たアーケードの「パックマン」やAtariのゲームでしたが、番組が流れてくるだけだったテレビ画面の向こうを自分で操作できる!これはほんとうに衝撃的でした。空想の世界に入り込んでリアクションが返ってくる、ただそれだけの体験に途方もなくワクワクしたものです。

    それからは呆れるくらいゲームばかりでした。持てる時間とお金のほとんどをゲームに費やしました。小説が映画やアニメより想像力をかきたてると言われるように、当時のゲーム特有の「抜けのある抑えた世界観」は私にとってたいへん想像力をかきたててくれるもので、描くイラスト等もゲームの世界観を題材にイメージをふくらませたものが多かったです。BASICでゲームプログラミングをかじったりもしました。当時はバンドなどいろいろなものが流行りましたが、私はほんとうにゲームばかりでした。いま思い返すと実に取りこぼしの多い学生生活で、取り返しのつかないことをした気もしてしますが、あれから30年以上経ったいまもゲームに愛情を注げるのはこの時期があったからこそで、そういう人生だった、と思うしかないですね。

  • 3DCGと出会い、ゲーム業界へ

    大学に進学して、パース図などで絵を描く要素がありそうだ、というボンヤリした動機で工学部の建築・都市工学を専攻したのですが、これは結果的に大きな転機になりました。感覚だけでなく論理的に導かれる「デザイン」という考え方にここではじめて向き合って、自分の理屈っぽさとビジュアルとをはっきり繋ぐ道を見出すことができたからです。かなり熱心に勉強しましたし、デザインは「作る」ものじゃなく「解く」ものだ、という先生の教えはいまでも大事にしています。

    また、この90年代後半は家庭用PCが爆発的に普及していた時期で、プロの映像制作現場にしかなかったハイエンド3DCGの技術が学生にも何とか手が届く価格帯で手に入るようになってきた時期でもありました。プレゼン図面のパースを描くために手を出したものですが、芸術や絵心とはむしろ対極にある論理的な物理演算が息をのむような美しい映像を生み出す3DCGの面白さに、デザインと同様に強く惹かれていきました。

    やがて就職活動の時期が迫り、自分が何をしたいか考えたとき、やはり絵を描きたい、と思うようになりました。美大で訓練されてきた人たちとまともに張り合えるとはやはり思えませんでしたが、学生としては当時かなり珍しかったCGのスキル、青春を捧げてきたゲームへの熱意と造詣を足せば、ゲーム業界なら拾ってもらえるチャンスがあるかもしれないと考えたのです。通用しなければそれまで、と臨んだゲーム業界への就職活動は望外にうまく運び、セガでアーティストのキャリアを始めることになります。

  • グランツーリスモを生み出す現場

    セガではゲームCG特有の考え方と技術とを基礎からきびしく叩きこまれ、何よりここでエンジニアと仕事をすることを覚えました。趣味のCGではどれほどスキルを磨いてもCGソフトの機能の枠を出ることはできませんが、エンジニアと組めばレンダリングのしくみさえ根本から作り替えることができるのです。当時のゲームCGのクオリティは学生時代に手がけた静止画CGに遠く及ばないものでしたが、ほしい画に特化してハードウェアの限界を引き出す共同作業はクリエイティブで、ほんとうに面白かったです。エンジニアと一緒に仕組みを考え、プログラムを組んでもらい、それを良い画をつくって返す。シンプルなことですが、仕事ってこんなに面白いんだ、と思ったものです。

    ポリフォニー・デジタルに移籍したのはキャリア7年目、PlayStation®3がローンチされて間もない2007年のことです。コースのリアリティを引き上げるために建築・土木・都市設計分野に強い人材をさがしていたチームのニーズに一致してお誘いをいただいたのですが、昔から「グランツーリスモ」のグラフィックはずば抜けて美しく、一体どんな凄い人たちがこれを生み出しているのか一度は見てみたいと思っていた国内トップの現場だったので、念願がひとつ叶いました。そして、ここまで積み上げてきたことが全部繋がったような気がして、とてもうれしかったですね。

    当時開発されていたのは『グランツーリスモ5プロローグ』でしたが、これだけシリーズを重ねて成功してきて、しかもモータースポーツを再現するという非常に安定した堅い骨格を持つゲームであるにもかかわらず、現場はまったく新しいものをゼロから創っているような雰囲気だったことにとても驚きました。すでにできあがったものに上積みしていくのではなく、いつもその時点の技術水準にふさわしいレベルで現実を測定・評価し、その再現に必要な環境を時間をかけて自力で組み、出来上がるものについても自分たちで検証を重ねる労をいとわない。そんな常軌を逸した誠実なプロセスを支える、おそろしく優秀なエンジニアとアーティストがいます。

    私もこの10年間ずっと「グランツーリスモ」ばかり作っているわけですが、いつも同じ作業をしているようでありながら、いまだに驚きと発見がつきないというのは、考えてみると凄いことです。

  • こんな方に

    クルマがレースをするゲームをつくる会社、とは思わないでほしいです。「グランツーリスモ」というアウトプットはほんの上澄みにすぎず、水面下にはそれを生み出すための途方もなく懐広い礎があります。クルマがレースをする、というシンプルなプラットフォームであるからこそ、それだけにとどまらないどんなプレミアムを載せられるかが問われてきます。数学でも、物理でも、気象でも、天文でも、機械でも、建築でも、動植物でも、スポーツでも、写真でも。あなたが何かしらのエキスパートであるならば、それがどんな分野であっても「グランツーリスモ」と交わる点、変換できる点をどこかに見出すことができるはずで、それができる方なら自由に活躍、貢献することができる集団だと思います。

    TA(テクニカルアーティスト)という私の立場から言えば、よりリアルな映像をつくるためには現実で起きていることをモデル化するわけですが、物理や化学などの専門知識をもって一緒に洞察してくれる方がきてくれたらとても心強いですね。

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